DVを題材にしたコミックがあることを知りました。海里真弓(Mayumi Kairi)・原作 エトウケイコ 「DV」です。「その
恋は暴力を連れてきた。」と裏表紙に書かれています。
作者の海
里さんはアウェアの山口さん著作の「愛する、愛される 若者のためのレッスン7」でショート・コミックを描かれています。いきなり海里さんのショート・ストーリー「愛されていると思ってた」(原作・レジリエンス)で始まり、DVを衝撃的に読者にイメージさせることに成功しています。だから私はその続編のようなものがあるのかな? あれば読みたいなと思っていました。
最近、彼女のこの作品をみつけました。作品は、DVについてかなりよく勉強されているものと感じました。D Vでは被害者がどうして「イヤといえないのか?」「何故逃げないのか?」とか、「せっかく離れたのに何故また加害者のもとに戻ってしまうのか?」、さまざまな誤解が社会の中に依然ありますが、そんな疑問に答えてくれそうです。友だちが被害者にどのうようにサポートしていったらよいか、DV法についても触れられているので、これから被害者の支援・サポートをしたいと思っている人にもわかりやすい内容です。
ただ、加害者の「正也」にDVをする背景として彼の幼いときの家庭環境を描いています。「そういう理由があればDVをするようになってもいいのか」とDVに言い訳を与える印象を受けるのが気がかりです。DVをする人は「ストレスがあった」「幼い時からの傷つきがあったから」と暴力をふるう理由を正当化します。しかし、そのような傷つきやストレスを抱えた人が全員DVをするでしょうか? DVをするかしないかは本人の選択です。本人が選んだ行動なのです。傷つきやストレスのケアーはもちろん必要ですが、それだけでDVの問題が解決するのではありません。DV加害者は自分がしてしまったDV行動に対して、暴力をふるった責任を自分でとる必要があるのです。
また、同時収録されている短編「タカシ」があります。彼の立ち直りを信じて女性がただただ待つ…というようなストーリーになっています。(大胆にまとめてしまい、海里さん、ごめんなさい) 彼女の「彼を信じる自由」は誰にも侵されないけれど、彼の行動を変えるのは彼自身であること、待つだけでは彼の行動は変えていけない面もあるということを念頭に読んでほしいと思います。年齢の低い読者が安易に「じゃあ、私の彼もいつかはきっと変わる!」とひたすら信じて却ってデートDVが酷くなるという事態をまねき兼ねません。若い人にはそういうアドバイスと共にこの本を勧める、ということも必要かなと感じました。
私も胸が疼きました。力作です!! (2004年発行のため、最新のDV法には対応していません)
最近のコメント